知的財産権の侵害案件では、いきなり訴訟を提起されることは稀で、通常は警告書の送付を端緒として、交渉が開始されます。
以下では、他人の特許権を侵害したとする警告書が送られてきた場合の対応について見ていきます。
■ 状況を把握する
警告書には、特許権を侵害したとされる商品の製造や販売の中止だけでなく、販売済み商品の回収や在庫・半製品の廃棄、製造設備の除去まで要求されているものがあり、また、これまでの販売個数や販売金額などについて報告を求めるものも見られます。
このような警告書を受け取った場合、相手方あるいはその代理人(弁護士であることが多い)に連絡をする前に、まずは、登録原簿や特許公報、包袋(出願手続時の記録一式)などをとり寄せて、権利の有効性や権利内容を把握します。
そのうえで、侵害だと指摘されている実施内容について、侵害の有無を検討します。この判断については、上記「知的財産権が侵害された場合の対応」の中で述べたことが妥当します。
■ 反論を検討する
当方の実施内容が、相手方の権利の範囲に属するように見えても、無効の抗弁(特許法104条の3)や先使用による通常実施権(特許法79条)を主張できる場合があります。
そこで、そのような反論が成り立つかどうかについて検討する必要があります。
また、それと合わせて、仮に侵害だとすれば、どの程度の賠償額になるのかについても、過去の販売実績や経費率などから大まかに把握しておくことが望ましいといえます。というのも、予想される賠償額の多寡により警告への対応方針に影響することがあるからです。
■ 回答書を作成する
検討の結果、侵害の事実がないと判断できれば、その理由を付して回答書を送付するのが一般です。
他方で、侵害の可能性が高いと判断される場合には、以後の対応について慎重に検討する必要があります。
回答するのかしないのか、回答するとしてもどのような主張を行うべきか、商品の製造・販売を中止するのかしないのか、不利な状況の下、どのように交渉を進めていくのか(侵害を回避する構造への設計変更やライセンス契約の諾否およびその内容など)、さらには、協議が決裂し訴訟提起された場合の方針などについて、専門的な判断が要求されます。